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本プロジェクトは2015年3月31日で終了しました。


 本研究は、文部科学省からの受託(原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ「「原子力ムラ」の境界を越えるためのコミュニケーション・フィールドの試行」:研究代表者 木村 浩(平成24年度は東京大学、平成25年度、平成26年度はNPO法人パブリック・アウトリーチ))により実施されています。
 本ホームページでは、会合の議事録、社会調査結果、コミュニケーション・フィールド(フォーラム)実施報告などの情報を公開していきます。


背景と研究目的・意義


 原子力発電所に代表される社会的忌避感を内包する施設(迷惑施設)と社会とが適切な関係性構築を迫られる場面において、市民と専門家の当該技術に関連する認識のギャップは、それを阻害する大きな要因のひとつとして古くから指摘されてきました。
 例えば、原子力発電所の立地、高レベル放射性廃棄物処分場の立地に始まり、福島第一原子力発電所事故(以降、福島事故)の結果から必要に迫られる除染廃棄物に対する中間貯蔵施設、最終処分施設の 立地も同じ問題を抱えることになるでしょう。
 福島事故後に特によく聞かれるようになった「原子力ムラ」という言葉は、この市民と専門家のギャップを示した端的な言葉として捉えることができます。「原子力ムラ」は福島事故以前からその存在を指摘されていましたが、福島事故はこの境界の活性化エネルギーを高め、さらに越えにくい、壊しにくいものとしてしまったと考えられます。

 本研究が目指す目標とは、「原子力ムラ」を越えることによって、適正な情報を社会が獲得できるようになるための風土を作りだすきっかけとすることです。
 そのためには、市民と専門家が対等な立場で、知識、情報量、経験、社会的立場、価値観、人生観等までを含んだ、お互いのコンテクストを共有し、尊重することを可能とする仕組みを動かしていく必要があります。

 そこで、本研究では、市民と専門家が対等な立場で、お互いの間のギャップを深く認識し、尊重しあえるようなコミュニケーション・フィールドを提案・試行し、
  • 2者の相互作用によるダイナミックな変容のプロセスを明らかにする
  • このような変容が起こりうる条件を明らかにする
これをもって、今必要とされているコミュニケーション・フィールド構築のための実効的な示唆を得ることを目的としています。


実施内容の概要


本研究では、市民と専門家が対等な立場で、お互いの間のギャップを深く認識し、尊重しあえるようなコミュニケーション・フィールドを提案・試行し、市民と専門家とのダイナミックな変容のプロセスを詳細に分析します。

具体的には、deliberative poll(討論型世論調査)の手法を参考にして、
1.市民(首都圏住民500 名規模)と専門家(原子力学会員500 名規模)に対する社会調査を実施し、
2.これをベースとしたコミュニケーション・フィールド(原子力に対する賛否、安全性に関する考え方等を考慮して、原子力に対する考え方のバランスが取れるように、一般市民および専門家から10 名程度ずつを選出して「フォーラム」とする)を構築し、
3.フォーラムを実施します。
4.フォーラム参加者への継続的な調査を実施し、市民はもちろん、専門家側の意見形成(意見変容)プロセスをも同時に見ることができ、コミュニケーションによる市民と専門家の相互作用をダイナミックに捉えます。


体制


本業務は、以下の体制で行なわれます。




(A)意識調査・分析
日本原子力学会内に特別委員会を設け、社会調査票の検討、社会調査の実施を行います。
社会調査のページを参照ください。
社会調査はフォーラム参加者選定に用いられるため、(B)との連携も行います。

(B)コミュニケーション・フィールド試行
コミュニケーション・フィールド(フォーラム)実施の要件を検討します。
ファシリテーション経験の豊富なNPO法人の協力を得、実際にフォーラムを実施します。
フォーラムに関する情報について、詳しくはフォーラムのページを参照ください。
また、フォーラムの設計・運営等を実施する会議体が「フォーラム研究会」です。

情報の共有のため、定期的に「業務推進全体会合」を開催します。
また、業務の公正性を確保するため、「外部評価委員会」を設け、業務の正当性を評価します。


関連論文等


〔論文・解説等〕
    2015年度
  • 篠田佳彦,川本義海,原子力学会員の原子力利用に対する意識動向,社会技術研究論文集12, 85-94, 2015.

  • 2014年度
  • 篠田佳彦,予定調和でない議論とプロセスを踏んだ合意形成を,関西電力広報誌『躍』2015年3月13日号.
  • Y. Shinoda, Y. Kawamoto, Trend of Citizens' Attitude toward the Use of Nuclear Energy, 福井大学大学院工学研究科研究報告 63, 109-114, 2015.
  • 篠田 佳彦,土田 昭司,木村 浩,エネルギーと原子力に関する定期意識調査(首都圏住民),日本原子力学会誌和文論文誌13(3), 94-112, 2014. (doi:10.3327 / taesj.J13.018)
  • 木村 浩,福島事故後の世論の動向,環境と健康27(2), 187-195, 2014.
  • 木村 浩,「原子力ムラ」の境界を越えるためのコミュニケーション(2)「フォーラム」という取り組み,日本原子力学会誌アトモス56(5), 318-322, 2014.
  • 土田昭司,「原子力ムラ」の境界を越えるためのコミュニケーション(1)市民と専門家の間に存在する心理的境界,日本原子力学会誌アトモス56(4), 245-249, 2014.

〔学会等発表〕
    2014年度
  • 土田昭司,「原子力ムラ」の境界を越えるためのコミュニケーション・フィールド「フォーラム」の取り組み(1)福島事故後における市民と専門家の認識のギャップ ,日本原子力学会春の年会総合講演・報告1, 茨城大学,2015年3月20日
  • 竹中一真,「原子力ムラ」の境界を越えるためのコミュニケーション・フィールド「フォーラム」の取り組み(2)「フォーラム」の試みと成果,日本原子力学会春の年会総合講演・報告1, 茨城大学,2015年3月20日
  • 木村 浩,「原子力ムラ」の境界を越えるためのコミュニケーション・フィールド「フォーラム」の取り組み(3)コミュニケーション・システムとしての展望,日本原子力学会春の年会総合講演・報告1, 茨城大学,2015年3月20日
  • 木村 浩,「原子力ムラ」の境界を越えるためのコミュニケーション、「低線量の放射線健康影響を考える」公開フォーラムin大岡山(2015年1月23日)
  • 木村 浩,「原子力ムラ」の境界を越えるためのコミュニケーション・フィールドの試行,原子力システム研究開発及び原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ平成26年度成果報告会,2015年1月16日
  • 木村 浩,「原子力ムラ」の境界を越えるためのコミュニケーション、「低線量の放射線健康影響を考える」公開フォーラムin敦賀(2014年12月1日)
  • 土田昭司,木村 浩,神崎典子,諸葛宗男,久保 稔,丸山剛史,(東大) 竹中一真,篠田佳彦,別府庸子,「原子力ムラ」の境界を越えるための研究;(9)市民と専門家の原子力に関する認識の変化,日本原子力学会秋の大会P16, 京都大学,2014年9月8日
  • I. Takenaka, H. Kimura, WHAT DOES “NUCLEAR POWER VILLAGE” REPRESENT IN THE NEWSPAPER ARTICLES?, PBNC2014(19th Pacific Basin Nuclear Conference), 1A8-12, 291, Aug.25, 2014 (Vancouber, CANADA).
  • H. Kimura, I. Takenaka, S. Tsuchida, DEVELOPMENT OF A COMMUNICATION METHOD IN WHICH EXPERTS AND CITIZENS RESPECT EACH OTHER, PBNC2014, 1A8-12, 289, Aug. 25, 2014 (Vancouber, CANADA).
  • 木村 浩,「原子力ムラ」の境界を越えるためのコミュニケーション・フィールドの試行 市民と専門家がお互いを認めあうためには・・・「フォーラム」という取り組みに関する報告,資源エネルギー庁早朝勉強会,2014年7月24日

  • 2013年度
  • 土田昭司,木村 浩,神崎典子,諸葛宗男,久保 稔,丸山剛史,竹中一真,篠田佳彦,別府庸子,「原子力ムラ」の境界を越えるための研究;(6)質問紙調査に表れたフォーラムの効果を検討する,日本原子力学会2014年春の年会C11,東京都市大学(東京),2014年3月26日
  • 竹中一真,木村 浩,神崎典子,諸葛宗男,久保 稔,丸山剛史,土田昭司,篠田佳彦,別府庸子,「原子力ムラ」の境界を越えるための研究;(7)フォーラム参加者の気づきはどのように誘起されたか,日本原子力学会2014年春の年会C12,東京都市大学(東京),2014年3月26日
  • 木村 浩,神崎典子,諸葛宗男,久保 稔,丸山剛史,土田昭司,竹中一真,篠田佳彦,別府庸子,「原子力ムラ」の境界を越えるための研究;(8)フォーラムの再設計,日本原子力学会2014年春の年会C13,東京都市大学(東京),2014年3月26日
  • 竹中一真,総合講演・報告4「市民および専門家の意識調査・分析」特別専門委員会[社会・環境部会共催]「『原子力ムラ』の境界を越えるためのコミュニケーション」;(1) 福島第一原子力発電所事故と「原子力ムラ」,日本原子力学会2013年秋の大会,八戸工業大学,2013年9月4日
  • 土田昭司,総合講演・報告4「市民および専門家の意識調査・分析」特別専門委員会[社会・環境部会共催]「『原子力ムラ』の境界を越えるためのコミュニケーション」;(2) 社会調査に見る「原子力ムラ」の捉えられ方,日本原子力学会2013年秋の大会,八戸工業大学,2013年9月4日
  • 木村 浩,総合講演・報告4「市民および専門家の意識調査・分析」特別専門委員会[社会・環境部会共催]「『原子力ムラ』の境界を越えるためのコミュニケーション」;(3)「原子力ムラ」の境界を越えるために―「フォーラム」の取り組み,日本原子力学会2013年秋の大会,八戸工業大学,2013年9月4日
  • 竹中一真,木村 浩,神崎典子,諸葛宗男,久保 稔,丸山剛史,土田昭司,篠田佳彦,別府庸子,「原子力ムラ」の境界を越えるための研究;(4)相互理解を支援するコミュニケーション・マニュアル,日本原子力学会2013年秋の大会,八戸工業大学,2013年9月4日
  • 木村 浩,神崎典子,諸葛宗男,久保 稔,丸山剛史,土田昭司,竹中一真,篠田佳彦,別府庸子,「原子力ムラ」の境界を越えるための研究;(5)フォーラムの実施,日本原子力学会2013年秋の大会,八戸工業大学,2013年9月4日

  • 2012年度
  • 木村 浩,諸葛宗男,土田昭司,神崎典子,久保 稔,篠田佳彦,別府庸子,「原子力ムラ」の境界を越えるための研究;(1)研究全体のコンセプト,日本原子力学会2013年春の年会,東大阪,2013年3月26日
  • 土田昭司,木村 浩,諸葛宗男,神崎典子,久保 稔,篠田佳彦,別府庸子,「原子力ムラ」の境界を越えるための研究;(2)専門家と市民への社会調査,日本原子力学会2013年春の年会,東大阪,2013年3月26日
  • 神崎典子,木村 浩,諸葛宗男,土田昭司,久保 稔,篠田佳彦,別府庸子,「原子力ムラ」の境界を越えるための研究;(3)フォーラムの設計,日本原子力学会2013年春の年会,東大阪,2013年3月26日

〔マスメディア〕
  • NHKニュース7・ニュースウオッチ9,2014年7月16日

〔その他成果物〕



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