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平成25年度調査


2013年度は、第7回首都圏調査および第8回原子力学会員調査を実施しました。


首都圏住民に対する社会調査

名 称:第7回 エネルギーと原子力に関するアンケート
時 期:2014年1月7日~1月27日
対 象:首都圏30km圏内
方 法:割り当て留め置き法(地点別・性年代別回収条件は下表を参照)
回収数:500名




原子力学会員に対する社会調査

名 称:第8回 エネルギーと原子力に関するアンケート
時 期:2014年1月6日~2月6日
対 象:日本原子力学会員
方 法:無作為抽出 1400名に対し、郵送調査
回収数:558名(回収率39.9%)


分析結果の概要


a) 社会全般に関する関心・不安について
 首都圏住民が関心を持っていた事柄は、「自然災害」「政治や経済」「病気」「地球温暖化などの環境問題」などであった。前年度に関心が高かった「原子力施設の事故」「廃棄物問題」への関心は低下し、特に、「廃棄物問題」への関心が震災前の水準に戻っていたことは着目される。原子力学会員が関心を持っていた事柄は、「原子力」「資源やエネルギー」「政治や経済」「科学技術」「原子力施設の事故」「放射性廃棄物問題」「地球温暖化などの環境問題」「外交」であった。特に大きな経年変化は見られなかった。
 首都圏住民が不安に感じていたものは、「自然災害」「病気」「犯罪」「原子力施設の事故」などであった。前年度から比較的に「政治や経済」への不安が低下した。原子力学会員が不安に感じていたものは、「自然災害」「病気」「資源やエネルギー」「政治や経済」「戦争やテロ」などであった。前年度から比較的に「政治や経済」の不安が低下したのに対して、「自然災害」「地球温暖化などの環境問題」「戦争やテロ」の不安が上昇した。

b) 人や組織に対する信頼について
 首都圏住民、原子力学会員ともに、ほとんどすべての者が信頼するのは当然のことながら家族であった。家族以外では、首都圏住民においては、自衛隊、裁判所、近所の人、科学者・研究者、警察、新聞などが信頼されていた。信頼されていなかったのは、政治家、官僚であった。首都圏住民においては、原子力の専門家を、インターネットと同様に、信頼していないという者がどちらかといえば多かった。原子力学会員においては、家族以外では、自衛隊、裁判所、警察、原子力の専門家、科学者・研究者などが信頼されていた。信頼していなかったのは、市民団体、テレビ、インターネット、政治家、新聞などであった。原子力学会員が首都圏住民と異なるのは、原子力の専門家を信頼して、市民団体を信頼していない点である。また、官僚と大企業に対する信頼は首都圏住民よりも原子力学会員において高かった。
 また、社会心理学などで用いられている一般的信頼尺度の結果では、原子力学会員のほうが首都圏住民よりも、一般的に他者を信頼する傾向性が高いことを示されていた。

c) 原子力の利用・有用性について
 「原子力発電の利用-廃止」「原子力発電の有用-無用」「原子力発電なしの日本の経済発展」「20 年後の日本の発電に対する希望と予想」などの質問結果は、次のことを示している。
 首都圏住民においては、福島第一原発事故後に原子力発電が有用であり利用すべきだとの認識は激減した。2011 年度調査以降の3 回の調査結果は、原子力発電を否定する者がさらに毎年増加傾向にあることを示している。今後の発電源としては、新エネルギーに対する期待が特に強く、ほとんどすべての者が20 年後の最も多い発電方法が新エネルギーであることを希望していた。ただし、現実に20 年後の最も多い発電方法の予想として新エネルギーであろうとした者は45% 程度と前年度よりも減少していた。20 年後の最も多い発電方法として原子力であろうと予想し た者は12%程度であった。原子力学会員においては、大部分の者は原子力発電が有用であり利用すべきだと認識していた。しかし、福島第一原発事故後に、首都圏住民ほどではないものの原子力学会員にも原子量発電を否定的に認識する者が増えた。経年変化として、20 年後の最も多い発電方法として原子力発電を予想した者がわずかながらも減少傾向にあることなどから、この傾向は継続している方向にあるのではないかと思われる。首都圏住民、原子力学会員ともに、20年後の発電方法として希望とする回答と予想する回答にかなりの隔たりがあった。すなわち、首都圏住民は原子力発電を廃止して新エネルギーが使われることを希望するが、現実には原子力もそれなりに使われるのではないかと予想していた。それに対して、原子力学会員は原子力発電が使われることを希望するが、現実には原子力は使われなくなるのではないかと予想していた。

d) 原子力の安心/安全について
 首都圏住民においては、原子力に対しては、施設に対しても、また、携わる人組織に対しても、に基本的に不安感が強い。ただし、福島第一原発事故後に大きく高まった原子力施設の事故に対する不安は、その後年ごとに低下してきていた。不安の低下は原子力施設の事故への関心の低下と連動しているのではないかと解釈できる。
 原子力学会員においては、前項に示したように、原子力が社会において使われることについては否定的な方向への変化が示唆されるが、原子力の安全性や安心感については、多くの者が肯定的に認識していた。

e) 東京電力福島第一原子力発電所事故以降の意見について
 首都圏住民においては、東京電力福島第一原発事故によって、大多数の者が原子力発電、放射能・放射線に関連するほとんどのことで否定的な認識を持つようになった。この認識は、事故後3 年の時間が経過する間に元に戻ることなく、むしろ、年を追うごとに否定的な認識をする者がより増加する傾向が続いていた。
 原子力学会員においては、基本的には原子力発電、放射能・放射線に肯定的な認識が持たれていた。しかし、東京電力福島第一原発事故によって、2011 年度調査では原子力学会にも原子力発電に否定的な認識を持つ者が増えた。前回の2012 年度調査では否定的な認識を持つ者がいくぶん減少して事故前の水準に近づいていたが、今回の2013 年度調査では否定的な方向にまた変化して2011 年の水準に戻ったようである。

f) 原子力に携わっている人たちや組織に対する印象について
 今年度の調査では、昨年度と同様に、首都圏住民に対して原子力に携わっている人たちや組織に対する印象について質問をした。また、原子力学会員には原子力に携わっている人たちや組織が一般の人たちからどのような印象を持たれているかを推測する同等の質問をした。
 結果は、昨年度とほとんど変化はなく、実際には首都圏住民は原子力に携わっている人たちや組織に対してそれほどに悪い印象を持っていないにもかかわらず、原子力学会員は、原子力に携わっている人たちや組織が一般の人たちから極端に否定的な印象を持たれていると思い込んでいた。

g) 高レベル放射性廃棄物の最終処分について
 首都圏住民において、高レベル放射性廃棄物の地層処分に賛成する者と反対する者は、どちらも4 分の1 強ずつであった。核燃料サイクルについても同様に、賛成する者と反対する者はどちらも4 分の1 強ずつであった。首都圏住民の多くはこれらの質問に意見保留かわからない・知らないとしたが、毎年継続した質問結果では、高レベル放射性廃棄物処分について前向きに考えようとする者がわずかではあるが徐々に増加してきていたものと解釈できる。



調査票、単純・クロス集計、分析結果の詳細





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