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2007年度は、第1回首都圏調査および第2回原子力学会員調査を実施しました。

調査概要


第1回首都圏調査

名 称:第1回 エネルギーと原子力に関するアンケート
時 期:2007年5月~6月
対 象:首都圏30km圏内
方 法:割り当て留め置き法(性年代別回収条件は下表を参照)
回収数:500名


第2回学会員調査

名 称:第2回 エネルギーと原子力に関するアンケート
時 期:2008年1月~2月
対 象:日本原子力学会員
方 法:無作為抽出 1400名に対し、郵送調査
回収数:591名(回収率42%)


分析結果の概要


首都圏調査の分析結果

a) 原子力発電に対する関心について
 関心に関して、原子力発電に対して、関心があると回答する者(関心がある、どちらかといえば関心があると回答した者)が4割を超えている。また、男性の方が、関心があると回答する割合が高い。
 
b) 原子力の利用・有用性について
 原子力発電を利用してゆくべきと回答する者が4割を超える。一方、やめるべきと回答するものは2割に満たない。また、利用してゆくべきと回答する者は男性の方が多い。20歳代、30歳代で「どちらともいえない」と回答する者が多く、自らの意見を確定できていないことが予想される。
 およそ6割の回答者が、原子力発電が有用であると回答している。一方、無用であると回答する者は、1割にも満たない。(6.8%)20歳代、30歳代で「どちらともいえない」と回答する者が多く、自らの意見を確定できていないことが予想される。

c) 原子力の不安/安全/信頼について
 原子力発電に対して不安と回答する者は、5割を越える。一方、安心であると回答するものは1割程度である。また、原子力発電に対して不安感を抱くものの割合は、女性の方が高い。
 今後100年間に放射性物質が原子力発電施設から外へ漏れて、一般の人びとが死亡するような事故が起こると思っている回答者が56.6%に達する。一方、起こらないと思う回答者は13%である。この設問に関して、男女の差はあまりみられないが、どちらかといえば、女性のほうが事故が起こると感じているようである。

d) 原子力の利用に係わる意見について
 原子力発電なしで電力を十分供給できるとは思っておらず、また、原子力がCO2を排出せず、地球温暖化に貢献していることは認識している。
 一方で、発電所の運転年数増加に伴って、安全性が低下していると感じている。
 本調査は中越沖地震の前に実施されているが、それでも、地震国に原子力発電所は危険であると認識している。
 放射性廃棄物の処分に関しては、早急に対応しなければならないが、その実現はしばらく難しいと認識している。また、再処理によって、プルトニウムは抽出すべきではないと認識している。
 今後は新エネルギーの開発・育成に力を入れるべきと認識している。

 また、再処理に関する事項、放射性廃棄物処分に関する事項、CO2抑制に関する事項に対して、「わからない・しらない」と回答する者が多い。具体的には、再処理に関する事項(ケ)36.0%、(ア)14.2%、放射性廃棄物処分に関する事項(コ)17.0%、(サ)19.6%、CO2抑制に関する事項(ウ)15%となっている。これらの質問は「どちらともいえない」と回答する者も多く、判断に対してグレーゾーンの領域が大きい。


専門家調査の分析結果

a) 原子力発電に対する関心について
 原子力発電に対する関心は高い。

b) 原子力の利用・有用性について
 原子力発電が有用であると認識している。具体的には、現時点において、原子力発電なしでは電力供給できず、近い将来においても原子力発電に代われる発電方法はないと考えている。原子力発電はCO2を排出せず、地球温暖化に貢献でき、使用済み燃料を再処理することによって、ウランを半永久的に有効利用できると認識している。プルトニウムを抽出することは容認する姿勢を見せている。今後も原子力発電を利用してゆくべきであると考えている。

c) 原子力の安心/安全/信頼について
 原子力発電の利用について安心であると認識しており、原子力に携わる人たちの安全確保に対する意識や努力を信頼している。
 原子力発電による放射性物質の環境汚染の有無については意見が分かれる。しかし、原子力発電施設から放射性物質が漏れて一般の人びとが死亡するような事故は起こらないと考えている。
 
d) 原子力の利用に係わる意見について
 原子力発電所の高経年化に伴う安全性の低下に対しては、意見が分かれる。
 放射性廃棄物処分の処分場を早く決定すべきと考えているが、最終処分場の決定の時期について、認識がわかれる。
 大勢は、新エネルギーの開発や育成よりも、原子力発電の技術開発に力を入れるべきと考えているが、一部そうでない回答者も見受けられる。
 日本のような地震国であっても、原子力発電は安全にやれると認識している。


首都圏住民と専門家の考え方の比較分析

 原子力学会員は[エネルギー][原子力]関係の事項以外は首都圏住民とほぼ同様の回答傾向を示している。
 首都圏住民は[環境]には関心が高いが、[エネルギー][原子力]への関心は低く、知識も少ない。
 首都圏住民は、原子力発電の利用-廃止については原子力学会員とは程度の差はあるが同傾向の回答(利用意見優勢)であるが、中間回答が多いのが大きな差異である。
 首都圏住民は、原子力の[有用]関係の事項は原子力学会員とほぼ同傾向の回答であるが、中間回答が多いのが大きな差異である。中間回答が多いのは、関心が低く、知識も少ない事が原因の一つと考えられる。
 首都圏住民は、原子力の[安全・安心]関係の事項は原子力学会員とほぼ逆の回答傾向を示している。
 首都圏住民は、調べたり、教えてもらった原子力関係の言葉として、[放射能]の回答割合が一番高い。おそらく、報道などで、[放射線]や[放射性物質]のことも[放射能]と便利に誤用、乱用しているためと思われる。
 首都圏住民は、処理・処分関係の関心や知識は低い。
 今後のわが国のエネルギー政策で取り組むべきものとして、首都圏住民は[新エネルギー][環境]への回答率が高い。原子力学会員は[原子力発電の推進]への回答率が高い以外は、首都圏住民とほぼ同様の回答傾向を示している。
 原子力発電情報の情報源は、首都圏住民は、[テレビ番組][新聞記事][インターネット]への回答が多い。原子力学会員は[新聞記事][インターネット][書籍・専門書][身内・友人・知人]への回答が多い。特に[インターネット]への評価が意外に高い。

 今回の調査で特に注目できるのは、Q1,Q2,Q8,Q10-ケである。
 首都圏住民と原子力学会員は[原子力]関係の事項についてその知識や関心に大きな差異(首都圏住民はそれらが小さい、原子力学会員はそれらが大きい)がある。
 首都圏住民は原子力について知識や関心は小さく(特に処理・処分関係は顕著)、それがいくつかの質問において中間回答が多くなる原因となっていると思われる。
 また、原子力の[安全・安心]関係の事項についても、首都圏住民と原子力学会員は安心-不安感に大きな差異(首都圏住民は不安が大きい、原子力学会員は不安が小さい)がある。
 しかし、その差異は原子力という範囲内のことであって、全体の中からみて他事項と比較すると、首都圏住民も原子力学会員も、その不安の存在は小さいということになる。
 この首都圏住民の原子力に対する無知識・無関心と、不安に対する2つの結果(安心か不安か?と問えば不安と答えるが、他不安事項と比べるとその不安感は小さい)について考慮する必要があるといえる。


調査票、単純・クロス集計、分析結果の詳細