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2009年度は、第3回首都圏調査および第4回原子力学会員調査を実施しました。

調査概要


第3回首都圏調査

名 称:第3回 エネルギーと原子力に関するアンケート
時 期:2010年1月
対 象:首都圏30km圏内
方 法:割り当て留め置き法(地点別・性年代別回収条件は下表を参照)
回収数:500名


第4回学会員調査

名 称:第4回 エネルギーと原子力に関するアンケート
時 期:2010年1月
対 象:日本原子力学会員
方 法:無作為抽出 1400名に対し、郵送調査
回収数:625名(回収率44.6%)


分析結果の概要


首都圏住民と専門家の考え方の比較分析

a) 社会全般に関する関心・不安について
 関心に関して、首都圏住民は[地球温暖化][物価・経済][政治]などには関心が高いが、[資源やエネルギー][原子力]関係事項への関心は低い。原子力学会員は首都圏住民と比べると、[資源やエネルギー][科学技術][外交][原子力]関係事項への関心が高く、[病気][老後][自然災害][犯罪]などが低い。
 不安に関して、首都圏住民も原子力学会員も不安に感じる事柄と関心のある事柄の順序はほぼ同様の傾向を示しており、原子力関係への不安は双方とも低い。原子力学会員は首都圏住民と比べると、[地球温暖化][病気][老後][自然災害][物価・経済][雇用]への不安が低く、[資源やエネルギー][外交]への不安が高い。

b) 原子力の利用・有用性について
 首都圏住民は、利用回答(利用、どちらかといえば利用)が約4割、廃止回答(やめる、どちらかといえばやめる)が2割弱であり、中間回答(どちらともいえない)が約4割である。また、有用回答(有用、どちらかといえば有用)が約5~6割、無用回答(無用、どちらかといえば無用)はほとんどなく、中間回答が4割弱である。
 原子力学会員は、ほぼ全員が利用回答および有用回答である。
 両グループは程度の差はあるが同傾向の回答(利用回答優勢および有用回答優勢)である。その大きな差は中間回答の差である。
 「20年後の社会や人々の生活にとって有用」の納得の有無については、首都圏住民は、納得できる回答が3割強、中間意見が約5割で、納得できない回答はほとんどない。原子力学会員は大多数が納得できる回答である。「現在の有用性」の認識と比較すると、「20年後の有用性」の認識の方がやや低い。

c) 原子力の不安/安全/信頼について
 首都圏住民は、不安回答(不安、どちらかといえば不安)が約5割、中間回答が3割強である。原子力学会員は当然のことであるがほぼ全員が安心回答(安心、どちらかといえば安心)である。
 首都圏住民は、原子力の[安全・安心]関係の事項は原子力学会員とほぼ逆の回答傾向を示している。
 原子力に携わる人たちの安全確保の意識や努力を信頼については、首都圏住民は4割弱が認めており、信頼を認めてない者は2割に満たない。原子力学会員は8割程度が携わる人への信頼を認めている。

d) 核燃料サイクル・高レベル放射性廃棄物について
 プルサーマルに関する意見として、首都圏住民も原子力学会員も共に多い意見は、[使用済み燃料をリサイクルすることは、資源の効率的な利用になると思う。]ので[日本は、使用済み燃料のリサイクルを行うべきだ。]その際、[プルトニウムの取り出しや利用に際しては、国がしっかりと管理して欲しい。]である。首都圏住民のみ[使用済み燃料を再処理する際の放射能汚染が心配だ。]が多い。
 高レベル放射性廃棄物の処分に関する意見として、首都圏住民は、関心も知識も少なく、漠然とした不安のみ持っている状態といえる。原子力学会員は処分に前向きで、住民に対して関心や知識を持つことを期待している。原子力発電と使用済み燃料の処理・処分や高レベル放射性廃棄物の処分についての説明文について、首都圏住民はどの部分も、聞いたことがあるとの回答割合が4割前後であり、聞いたことのある人は多いといえる。


首都圏住民と専門家の調査結果の経年比較

a) 社会全般に関する関心・不安について
 関心に関して、首都圏住民は[物価・経済(注:2007年度は[物価]となっているので単純比較はできない)][雇用]は前年度から関心が高くなっており、今年度は[政治]が高くなっている。前年度関心が高くなっていた[輸入食品]は、今回は低くなっている。原子力学会員は[地球温暖化][環境]への関心が、低くなっている。
 不安に関して、首都圏住民は[物価・経済(注:2007年度は[物価]となっているので単純比較はできない)][雇用]は前回から不安が大きくなっており、今回は[老後][政治]の不安が大きくなっている。前回不安が大きくなっていた[輸入食品]は、今回は低くなっている。原子力学会員は[地球温暖化]への不安が低くなっており、[外交]への不安が大きくなっている。
 [地球温暖化]への関心や不安が小さくなっている。[地球温暖化]に対する意識の変化が興味深い。

b) 原子力の利用・有用性について
 有意な変化は見られない。
 ただし、首都圏住民は、「将来の」原子力発電の有用性や必要性についてはあまり肯定的でなく、それが拡大する傾向がみられる。また、原子力学会員でも、原子力発電より新しいエネルギーの開発と育成に重点を、という原子力開発の根幹に関する意見に対し、納得できないとする回答が減少する傾向がみられているのは興味深い。

c) 原子力の安心/安全/信頼について
 過年度までの傾向と同様、首都圏住民は、原子力関係者の安全確保の意識や努力を信頼するなど原子力の安全関係について肯定的方向への変化を示している。

d) 核燃料サイクル・高レベル放射性廃棄物について
 有意な変化は見られない。


新検査制度に関する調査結果

 今年度調査では、新規調査項目として新検査制度に関する調査項目を加えた。その結果の主要点を示す。
 首都圏住民は、新検査制度についてほとんど知識がなく、半数以上が関心もなく、調べる意欲もない。したがって、この制度に対する安心-不安感も半数以上が中間回答であり、判断保留の状態にある。
 原子力学会員も、新検査制度について、内容まで知っている人は約半数しかいない。大多数が関心を示しており、調べる意欲を示している。また、この制度に対する半数以上が安心回答であるが、残りの約4割は安心していない。

 また、首都圏住民および原子力学会員の新検査制度に対して有するイメージをまとめると以下のようになる。

(1) 首都圏住民

a) 肯定方向のイメージ
 電力会社が安全性を自主的に確保することで、より安全性が高まるという期待がある。また、特に根拠はないが、なんとなく安全性が高まりそうだからという期待で肯定的意見を示す意見もある。どちらにしても、国や電力会社を信頼しているという根本があると思われる。

b) 中間的なイメージ
 電力会社の自主的取り組みによる安全性向上に評価をしながらも、検査期間の延長に対する疑問や電力会社に任せてしまってよいのか(国の役割という観点も含めて)という疑問を持っている。また、「ひと」が係ることによるエラーやマンネリ化を懸念する声もある。
 新制度に変わって、成果がどう変わってゆくのか見守ってから判断したいとの慎重な意見も見られる。

c) 否定方向のイメージ
 否定的意見の理由を示すと思われる大きな要点は2つで、1つは検査期間の延長に関する観点、もう1つは安全確保の主体に関する観点である。
 検査期間の延長に関しては、延長できる意味がわからない、検査期間は短いほうが安全確保に効果的なのではないか、せめて現状維持なのではないか、という意見がほとんどである。これらの意見の根本には、検査期間の延長が安全確保にどのように結びつくのかがわからないという疑問があり、検査期間は短いほうが、感覚的に考えれば安全だという思考展開であると思われる。
 安全確保の主体に関しては、国や第三者機関による検査の厳格化を求める意見が多い。この根本には、電力会社に任せてしまうことに対する不信感がある。新検査制度が国から電力会社への責任転嫁と感じるという意見もある。
 その他、「ひと」の問題を指摘する意見や、検査をしたからといって、安全が完全に確保されるわけではなく、結局不安であるという感情を示す意見などが見られる。

d) 興味・関心
 検査のあり方や、その結果に関する広報の必要性について、特に国が知らせるべきとの意見が見られる。

e) 理解困難・興味なし
 内容が難しい、他人事という意見が見られる。


(2) 原子力学会員

a) 肯定方向のイメージ
 新検査制度に肯定的な理由としては、新検査制度が合理的であり、安全性と経済性をともに向上できると期待されるという意見が多くみられる。その結果のメリットとして、設備利用率の向上や電気料金への反映なども挙げられている。また、事業者の主体性と責任を認めることが安全確保への一歩前進であるという意見もみられる。

b) 中間的なイメージ
 新検査制度による稼働率の向上や、経済性の向上といったメリットを認めるものの、安全性の向上に対して、懸念を持つ意見が多い。その理由としては、電力会社の利益誘導の可能性、過度な規制による電力会社のモチベーションの低下、書類作成等の雑務増加に伴う実質的な安全確保のための活動低下、などが挙げられる。そのため、国や第三者機関によるチェック機能を求める。
 一方で、新検査制度の効力が発揮するためにチェック機能を強化するというのではなく、国と電力会社、電力会社内の現場と本部の信頼関係が重要であるという意見も興味深い。

c) 否定方向のイメージ
 新検査制度によっては原子力の安全性の向上が図れるとは思えない、という意見の群である。その理由としては、電力会社やその構成員のモチベーションの低下、規制の厳格化や関連業務の増加による電力会社の不正の増加、電力会社が定期検査の間の期間延長を目的とした経営判断を行ってしまう可能性、客観的な検査基準の不在、検査側の適切な人材の不足、定期検査の間の期間延長自体に対する安全性向上の懸念などが挙げられている。
 実際に検査制度が想定したとおりに機能するか、というところに対する疑問もある。例えば、定期検査の間の期間延長を電力会社が申請したとして、それを規制機関が本当に認めることができるのか、といったような疑問である。また、国が電力会社に責任を転嫁しただけと見られる意見もある。

d) 新検査制度に対する問題点の指摘・提案等
 新検査制度に対して、更なる検査の簡素化と電力会社の自主性の尊重、人材や技術力の維持、電力会社のPDCAサイクルの確立、電力会社の信頼性を向上させるための監査方策の提案などが示されている。
 また、検査自体の変化による関連会社への影響を懸念する声もある。

e) 一般市民・住民理解
 一般市民や住民に対して、新検査制度について広く理解を求めるべきという意見が多い。伝えるべき内容としては、新検査制度のメリット(合理的な検査・点検による安全性の向上、経済性の向上、稼働率の向上、CO2対策としての影響)を強調して、不安を喚起させないようにということが多く見られる。その中でも特に、合理的な検査・点検がどのように安全性を向上させるのかについては、車検などのたとえを用いるなどして、わかりやすく伝えるべきとしている。また、新検査制度=定期検査の間の期間延長ということではない、ということも理解してもらうべきとの声も多い。その他、海外実績や長期運転の実績、旧来の検査制度と何が違うのか、等々である。
 広報の媒体としては、テレビ、ラジオ、インターネット、地域広報詩、講演会等々、さまざまなものを用いて地道に行うしかないという意見が多い。
 一方で、新検査制度については、一般市民に理解してもらう必要はないのではないか、という声も少なくない。その場合は、知りたい人が知りたいときに情報が取れるように、インターネットなどで情報公開の整備をしておくのが良いとの意見を示す。



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