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2010年度は、第4回首都圏調査および第5回原子力学会員調査を実施しました。

調査概要


第4回首都圏調査

名 称:第4回 エネルギーと原子力に関するアンケート
時 期:2011年1月7日~1月24日
対 象:首都圏30km圏内
方 法:割り当て留め置き法(地点別・性年代別回収条件は下表を参照)
回収数:500名


第5回学会員調査

名 称:第5回 エネルギーと原子力に関するアンケート
時 期:2011年1月6日~1月21日(最終回収:2月2日)
対 象:日本原子力学会員
方 法:無作為抽出 1400名に対し、郵送調査
回収数:624名(回収率44.6%)


分析結果の概要


首都圏住民と専門家の考え方の比較分析

a) 社会全般に関する関心・不安について
 関心に関して、首都圏住民は[病気][老後][自然災害][物価・経済]などには関心が高いが、[資源やエネルギー][原子力]関係事項への関心は低い。原子力学会員は首都圏住民と比べると、[資源やエネルギー][科学技術][外交][原子力]関係事項への関心が高く、[病気][老後][自然災害][犯罪]などが低い。
 不安に関して、首都圏住民も原子力学会員も不安に感じる事柄と関心のある事柄の順序はほぼ同様の傾向を示しており、原子力関係への不安は双方とも低い。原子力学会員は首都圏住民と比べると、[地球温暖化][病気][老後][自然災害][物価・経済][雇用]への不安が低く、[資源やエネルギー][外交]への不安が高い。

b) 原子力の利用・有用性について
 首都圏住民は、利用回答(利用、どちらかといえば利用)が約4割、廃止回答(やめる、どちらかといえばやめる)が2割弱であり、中間回答(どちらともいえない)が約4割である。また、有用回答(有用、どちらかといえば有用)が約5~6割、無用回答(無用、どちらかといえば無用)はほとんどなく、中間回答が4割弱である。
 原子力学会員は、ほぼ全員が利用回答および有用回答である
 両グループは程度の差はあるが同傾向の回答(利用回答優勢および有用回答優勢)である。その大きな差は中間回答の差である。
 「20年後の社会や人々の生活にとって有用」の納得の有無については、首都圏住民は、納得できる回答が約4割、中間意見が約5割で、納得できない回答はほとんどない。原子力学会員は大多数が納得できる回答である。「現在の有用性」の認識と比較すると、「20年後の有用性」の認識の方がやや低い。

c) 原子力の不安/安全/信頼について
 首都圏住民は、不安回答(不安、どちらかといえば不安)が約5割、中間回答が3割強である。原子力学会員は当然のことであるがほぼ全員が安心回答(安心、どちらかといえば安心)である。
 首都圏住民は、原子力の[安全・安心]関係の事項は原子力学会員とほぼ逆の回答傾向を示している。
 原子力に携わる人たちの安全確保の意識や努力を信頼については、首都圏住民は4割強が認めており、信頼を認めてない者は2割に満たない。原子力学会員は8割程度が携わる人への信頼を認めている。

d) 核燃料サイクル・高レベル放射性廃棄物について
 プルサーマルに関する意見として、首都圏住民も原子力学会員も共に多い意見は、[使用済み燃料をリサイクルすることは、資源の効率的な利用になると思う。]ので[日本は、使用済み燃料のリサイクルを行うべきだ。]その際、[プルトニウムの取り出しや利用に際しては、国がしっかりと管理して欲しい。]である。首都圏住民のみ[使用済み燃料を再処理する際の放射能汚染が心配だ。]が多い。
 高レベル放射性廃棄物の処分に関する意見として、首都圏住民は、関心も知識も少なく、漠然とした不安のみ持っている状態といえる。原子力学会員は処分に前向きで、住民に対して関心や知識を持つことを期待している。原子力発電と使用済み燃料の処理・処分や高レベル放射性廃棄物の処分についての説明文について、首都圏住民はどの部分も、聞いたことがあるとの回答割合が4割前後であり、聞いたことのある人は多いといえる。


首都圏住民と専門家の調査結果の経年比較

a) 社会全般に関する関心・不安について
 首都圏住民は、全体的に関心は減少ぎみであるが、[物価・経済]は高関心である。エネルギーや原子力関係への関心は低いままである。首都圏住民も原子力学会員も[地球温暖化]への関心が低く、[外交]への関心が高くなっている。
 不安に関して、首都圏住民も原子力学会員も[地球温暖化]への不安が低く、[外交]への不安が高くなっている。首都圏住民も原子力学会員も、原子力関係への不安は双方とも低い。
 [地球温暖化]への関心や不安が年々小さくなっている。[地球温暖化]に対する意識の変化が興味深い。

b) 原子力の利用・有用性について
 有意な変化は見られない。
 ただし、首都圏住民は、「将来の」原子力発電の有用性や必要性についてはあまり肯定的でなく、それが拡大する傾向がみられる。また、原子力学会員でも、原子力発電より新しいエネルギーの開発と育成に重点を、という原子力開発の根幹に関する意見に対し、納得できないとする回答が減少する傾向がみられているのは興味深い。

c) 原子力の安心/安全/信頼について
 過年度までの傾向と同様、首都圏住民は、原子力関係者の安全確保の意識や努力を信頼するなど原子力の安全関係について肯定的方向への変化を示している。

d) 核燃料サイクル・高レベル放射性廃棄物について
 有意な変化は見られない。


意識調査における新検査制度に係わる分析結果

 本調査において、新検査制度に係わる分析は、Q18およびQ19で実施された。形式としては、最初に新検査制度に関する簡単な説明を示し、その後、新検査制度に関する意見について回答者の意見に当てはまる項目を選択するというものである(Q18)。
 Q18において、首都圏住民は、「知っていた」が約5%であり、ほとんど知識がない。多く選択された意見としては、「検査の間隔が短いほうが安全」「国がわかりやすい説明をすべき」「国が安全確保すべきである」が挙げられる。また、新検査制度に関する賛否は決められないという回答者がほとんどであると思われる。
 一方、原子力学会員については、「知っていた」が約6割であった。多く選択された意見としては、「検査の間隔が長くてもよい」「安全の自主的確保はよい」「効率的に利用できる」、少し選択率が落ちて「国がわかりやすい説明をすべき」が挙げられる。また、原子力学会員は大多数が新検査制度に好意的であるが、6割前後の回答割合である。
 首都圏住民と原子力学会員との間には大きな意見のギャップがあることが見て取れる。特に、検査の間隔に関する意見と、誰が安全を確保するべきかということについて、大きな意見の差がある。しかし、両者とも「国がわかりやすい説明をすべき」という意見を持っている。

 次に、Q19において、新検査制度について自由記述を求めている。その結果概要を以下に示す。なお、ここから分析される新検査制度のイメージについては、専門家調査において新検査制度に対する制度的改善提案が多く見られるようになったが、そのほかは前年度と大きくは変わらない。(以下、下線部が昨年度と比べて今年度多く、もしくは新しく見られた意見であるが、統計的な意味はないことに注意が必要である。)

(1) 首都圏調査

a) 肯定方向のイメージ
 電力会社が安全性を自主的に確保することで、より安全性が高まるという期待がある。また、特に根拠はないが、なんとなく安全性が高まりそうだからという期待で肯定的意見を示す意見もある。

b) 中間的なイメージ
 電力会社の自主的取り組みによる安全性向上に評価をしながらも、検査期間の延長に対する疑問や電力会社に任せてしまってよいのか(国の役割という観点も含めて)という疑問を持っている。また、「ひと」が係ることによるエラーやマンネリ化を懸念する声もある。
 また、「安全が第一」という意見が多く見られる。

c) 否定方向のイメージ
 否定的意見の理由を示すと思われる大きな要点は2つで、1つは検査期間の延長に関する観点、もう1つは安全確保の主体に関する観点である。
 検査期間の延長に関しては、延長できる意味がわからない、検査期間は短いほうが安全確保に効果的なのではないか、せめて現状維持なのではないか、という意見がほとんどである。安全確保の主体に関しては、国や第三者機関による検査の厳格化を求める意見が多い。この根本には、電力会社に任せてしまうことに対する不信感がある。新検査制度が国から電力会社への責任転嫁と感じるという意見もある。
 その他、「ひと」の問題を指摘する意見や、検査をしたからといって、安全が完全に確保されるわけではなく、結局不安であるという感情を示す意見などが見られる。

d) 興味・関心、特に国民への周知
 検査のあり方や、その結果に関する広報の必要性について、特に国が知らせるべきとの意見が見られる。

e) 理解困難・興味なし
 難しい、わからないという意見である。


(2) 専門家調査

a) 肯定方向のイメージ
 新検査制度に肯定的な理由としては、新検査制度が合理的であり、安全性と経済性をともに向上できると期待されるという意見が多くみられる。その結果のメリットとして、設備利用率の向上や電気料金への反映なども挙げられている。海外の水準に追いつくべきという意見も多い。

b) 中間的なイメージ、新検査制度に対する問題点の指摘・提案等
 新検査制度による稼働率の向上や、経済性の向上といったメリットを認めるものの、安全性の向上に対して、懸念を持つ意見が多い。その結果として、実際に新検査制度を運用しながら、効果を確認し、制度自体を見直してゆくことが必要である、という意見がかなり程度見られる。オンラインメンテナンスの導入に言及する意見も見られる。
 また、新検査制度に対して、更なる検査の簡素化と電力会社の自主性の尊重、人材や技術力の維持、電力会社の信頼性を向上させるための監査方策の提案などが示されてるほか、検査官や規制側の適切な対応や人材育成を求める意見が多い。

c) 否定方向のイメージ
 新検査制度の効果に懸念を示す意見の群である。その理由としては、規制の厳格化や関連業務の増加による電力会社の不正の増加、電力会社が定期検査の間の期間延長を目的とした経営判断を行ってしまう可能性、客観的な検査基準の不在、検査側の適切な人材の不足、定期検査の間の期間延長自体に対する安全性向上の懸念などが挙げられている。
 また、国が電力会社に責任を転嫁しただけと見られる意見もある。

d) 一般市民・住民理解
 一般市民や住民に対して、新検査制度について広く理解を求めるべきという意見が多い。海外の事例などを用いて、その実績とメリットを説明してゆくべきという意見が見られる一方で、新検査制度のメリットだけでなくリスクも明確に示してゆくべきである、説明責任を明確にするべきであるという意見も見られる。
 一方で、新検査制度については、一般市民に理解してもらう必要はないのではないか、という声もある。



調査票、単純・クロス集計、分析結果の詳細