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2008年度は、第2回首都圏調査および第3回原子力学会員調査を実施しました。

調査概要


第2回首都圏調査

名 称:第2回 エネルギーと原子力に関するアンケート
時 期:2008年12月
対 象:首都圏30km圏内
方 法:割り当て留め置き法(地点別・性年代別回収条件は下表を参照)
回収数:500名


第3回学会員調査

名 称:第3回 エネルギーと原子力に関するアンケート
時 期:2008年12月
対 象:日本原子力学会員
方 法:無作為抽出 1400名に対し、郵送調査
回収数:611名(回収率43.6%)


分析結果の概要


首都圏住民と専門家の考え方の比較分析

a) 社会全般に関する関心・不安について
 首都圏住民は、地球温暖化・環境などには関心が高いが、エネルギー・原子力関係への関心は低い。
 原子力学会員は、エネルギー・原子力・科学技術関係の事項への関心が特に高く、それ以外では概して首都圏住民とほぼ同様の回答傾向を示している。
 首都圏住民は不安に感じる事柄と関心のある事柄の順序はほぼ同様の傾向を示している。原子力学会員も首都圏住民も、原子力関係への不安は相対的に双方とも低い。

b) 原子力の利用・有用性について
 首都圏住民は、原子力発電の利用-廃止については、利用意見が優勢である。また、原子力は電力供給、地球温暖化抑制の観点からの有用性をある程度認めており、現時点について、利用すべきと考えている。しかし、将来にわたって原子力に頼るかどうかは判断がつけられず、他のエネルギー開発も進めてほしいと考えている。
 原子力学会員は、原子力は電力供給、地球温暖化抑制の観点からも有用で、将来にわたって利用すべきであり、今後のエネルギー開発も原子力の技術開発をやりたいと考えている。
 現在の原子力の利用・有用性の認識について、首都圏住民と原子力学会員とは程度の差はあるが同傾向の回答であるが、首都圏住民では中間回答が多いのが大きな差異である。
 将来のエネルギーや研究開発については、首都圏住民は、今後のわが国のエネルギー政策で取り組むべきものとして、新エネルギー、省エネルギー、地球環境問題への回答率が高く、一方、原子力学会員は、エネルギー教育や啓蒙活動、原子力発電の推進への回答率が高い。それ以外は、首都圏住民とほぼ同様の回答傾向を示している。

c) 原子力の不安/安全/信頼について
 原子力学会員は、原子力の安全に関するさまざまな事案に対しても、ある程度安全であると認識しており、また、携わる人への信頼もある。そして、原子力の利用について、安心している。
 首都圏住民は、原子力の安全・安心関係の事項に関して、原子力学会員とほぼ逆の回答傾向を示している。

d) 原子力に関する知識について
 首都圏住民は、調べたり教えてもらった原子力関係の言葉として、「放射能」の回答割合が一番高い。
 原子力学会員の首都圏住民の回答予測の順番は首都圏住民の回答割合の順とほぼ同じであり、予測は概して間違っていないといえる。

e) 核燃料サイクル・高レベル放射性廃棄物について
 原子力発電と使用済み燃料の処理・処分や高レベル放射性廃棄物の処分についての説明文について、首都圏住民はどの部分も、聞いたことがあるとの回答割合が4割前後であり、聞いたことのある人は多いといえる。
 プルサーマルに関する意見として、首都圏住民も原子力学会員も共に多い意見は、「使用済み燃料をリサイクルすることは、資源の効率的な利用になると思う」ので「日本は、使用済み燃料のリサイクルを行うべきだ。」その際、「プルトニウムの取り出しや利用に際しては、国がしっかりと管理して欲しい」である。首都圏住民のみ「使用済み燃料を再処理する際の放射能汚染が心配だ」が多い。
 高レベル放射性廃棄物の処分に関する意見として、首都圏住民は、関心も知識も少なく、漠然とした不安のみ持っている状態といえる。原子力学会員は処分に前向きで、住民に対して関心や知識を持つことを期待している。

f) 「技術」というものの捉え方
 技術が人々に与える影響については、首都圏住民と原子力学会員の意見は概して同様であり、[人類の発展は技術の発展と共にあり、技術が人々に物質的な満足(生活の快適さ)、精神的な満足(心の豊かさ)と共に、物質的な弊害(環境汚染等)を及ぼしている]と考えている。
 ただし、精神的な弊害(人間らしさの損失等)については、首都圏住民は肯定が否定より多く、原子力学会員はその逆ではあるが、この問題についてはどちらも中間回答が多く判断保留の状況といえる。
 技術の方向付けに対する市民の関与については、概して首都圏住民より原子力学会員の方が積極的に肯定している。首都圏住民は中間回答が多く判断保留の状況といえる。
 技術とリスクの関係については、「少しでも危険性のある技術は利用すべきではない」の項目以外は、原子力学会員の方がリスクを受け入れる傾向が強いものの、概して首都圏住民も原子力学会員も回答傾向は同様である。リスクについて伝え方には表現等注意が必要であるといえる。


首都圏住民と専門家の調査結果の経年比較

a)  社会全般に関する関心・不安について
 首都圏住民の関心と不安を前回調査と比較すると、経済問題と食品問題への関心と不安が大きくなっている。おそらく、深刻化する不況と頻繁に報道される食品問題のためと思われる。

b)  原子力の利用・有用性について
 有意な変化は見られない。

c)  原子力の不安/安全/信頼について
 首都圏住民は、原子力の安全性について懐疑的であるが、原子力に携わる人に対してはある程度信頼しており、その信頼感は徐々に回復の兆しを見せている。そのため、原子力の安全性や、さらには安心感もいまだ十分とはいえないが、徐々に得られるようになりつつある。

 特に、下記の設問において、首都圏住民は、前回調査に比べて有意に肯定的方向への変化を示している。
 ・安心-不安感や事故について、前回と比べ、首都圏住民の意見は肯定的方向に変化している。
 ・「運転年数が長い原子力発電所が増えて、安全性は低下」の意見に、「納得できる」 回答が減少している。
 ・「原子力に携わる人たちの安全確保の意識や努力を信頼している」の意見に、「納得できる」が増え「納得できない」が減少している。
 ・「高レベル放射性廃棄物最終処分地は当分の間決定不能」の意見に「納得できる」 回答が減少している。

d)  原子力に関する知識について
 有意な変化は見られない。



調査票、単純・クロス集計、分析結果の詳細